西欧TV難燃基準アメリカ規格に統一する動き

臭素系難燃剤は、われわれの社会と日常生活に不可欠な各種電気・電子製品、輸送機器、建材等の構成材料の難燃化に広く使用されており、火災による人的経済的損失の防止に貢献している。

現在、世界中のどの国にも臭素系難燃剤の使用を規制する法律はないが、ヨーロッパ市場において環境に優しい製品として授与されるエコラベルを事務機器類を対象として検討する運動があり、その承認基準として筐体材料に臭素系難燃剤等の有機ハロゲン化合物の使用禁止が盛り込まれた。これは民間団体が組織する自主的なものであり、法的拘束はない。しかし、この動きに日系の機器メーカーが敏速に反応し、ノンハロ化の動きが促進された。ノンハロ系の樹脂は、リン系の難燃剤を添加したPC/ABSや変性PPO樹脂がその代表例である。

一方、これらノンハロ系難燃樹脂は一般的に耐加水分解性や耐薬品性に優れず、リサイクル後の物性等の劣化の懸念がある。さらに、ドイツのエコラベルの一機関であるブルーエンジェルも複写機のエコラベル承認基準のおいて、当初はプリンタと同様に筐体材料用にハロゲン系添加物を使用禁止物質にあげていたが、2002年まではPBBs,PBDPOs,塩素化パラフィンを除くハロゲン系材料の使用を延長することにした。

またEUの電気・電子機器廃棄物指令案(WEEE)においても、第二次ドラフトにおいては2004年以降にハロゲン系材料の使用禁止を唱えていたが、ヨーロッパ臭素系難燃剤工業会(EBFRIP)等からの抗議により、第三次ドラフトでは禁止物質をPBBs,PBDPOsに限定するように修正されている。またEBFRIPでは、PBDPOsの一種でテレビの筐体の難燃化に使用されているDBDPOが、ポリスチレンとの処方においてリサイクル時の実験で問題視されるようなダイオキシン/フラン類を発生させなかったことや、脱臭素化を起こさなかった事実から、PBDPOsも禁止物質条項から除外するようEUに働きかけてきた。

EUリスク評価における8年間におよぶ独自の科学的検証の結果、デカBDEは、最も多くの科学的なデータによって使用可とみなされ、新しく提案されたEU化学品政策(REACH)の要件を満たす難燃剤であることが明らかになった。
デカBDEが環境に及ぼすリスクはきわめて低く、これ以上の科学的調査は必要ないと結論づけた。

しかし現状では、ヨーロッパで販売されているテレビは、筐体材料にハロゲン系難燃剤を使用していると消費者雑誌等で非難を受け、またヨーロッパの難燃規格は緩いので現在はほとんどが難燃剤を含まない樹脂が使用されている。

その結果、ヨーロッパのテレビは従来よりも着火しやすく、テレビからの発火が原因による火災件数も以前よりは増加しており、難燃規格の厳しいアメリカのテレビと比較しても火災の発生件数は100倍以上になる。ダイオキシン類の発生に関しても、難燃化されていないテレビからの燃焼による方が、難燃化したテレビからの発生よりもはるかに多いという実験結果も報告されている。また、家電製品内部からの発火だけでなく、外部からの熱源(キャンドルの接触等)に対しても難燃化の必要が重視されている。

以上の状況から、現在ヨーロッパではテレビの難燃基準をアメリカの規格等と統一しようという動きがでてきた。


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