廃電気・電子機器リサイクル指令案(WEEE)の将来を見すえて
〜過去からの教訓、将来展望をもっての遂行〜
英国、貿易産業省
規制問題・リサイクル政策課長
マーク・ダウンズ博士


紹介
マーク・ダウンズ博士は、英国貿易産業省の規制問題・リサイクル政策課長(Head of the Regulatory Affairs & Recycling Policy Unit)である。
マーク・ダウンズ博士は、ロンドン大学を卒業し、生物工学の理学士を取得、クランフィールド大学(Cranfield University)でバイオセンサー・診断学で博士号を取得した。研究の一貫として、ダウンズ博士は東京技術研究所(Tokyo Institute of Technology)でバイオセンサー研究チームで働いた経験がある。1988年、英国政府化学研究所(Laboratory of the UK Government Chemist)のセンサー研究チームリーダー兼分子センサーLINKプログラム(Molecular Sensors LINK Programme)マネジャーに任命され、3年間その職を勤めた。出世コースのスペシャリスト・マネジメント開発プログラム(Management Development Programme for Specialists)に任命された後、管理実施課(management best practices section)での政策作業のために、貿易産業省(DTI)の本部に異動した。また、国立宇宙センターに勤務し、大学−産業連携課(University-Industry links section)のために、特に、大学卒業生のパートナーシップ(Post Graduate Partnership)スキームのマネジメントをした。
1993年、ダウンズ博士は、DTIの開発課(Innovation Unit、スタッフの50%がビジネス業界からの出向、50%が公務員)の課長となった。
1996年、東京の英国大使館の一等秘書官(貿易政策)に任命され、あらゆる英国−日本間の二国間貿易問題をカバーした。
2000年11月、DTIの環境法務部に戻り、リサイクル政策課(Recycling Policy Unit)の課長として、指令の全体的な規制業務においてより広範囲な利益を追求するとともに、WEEE、バッテリー、EEE、IPPおよび包装指令をカバーしている。

要約
英国では、貿易産業省がEUの廃電気電子機器指令(WEEE)と危険物質指令案(RoHS)に関する交渉を率先している。EU加盟各国が2001年6月7日に合意した「共通ポジション(Common Position)」は、指令に対して加盟国に求められる見解を詳しく述べている。本論文は、WEEEプラスチックのリサイクルを拡大し、焼却とマテリアル・リサイクルの必要性の理解及び英国で現在実施されているプラスチックのリサイクル方法を考察する。また、物質の使用禁止は信頼できるリスクアセスメントを根拠にすべきであるとする英国政府の見解を確認し、指令が提供する機会とビジネスチャンスを考察し、英国のこれまでの経験を紹介する。

廃電気・電子機器リサイクル指令案(WEEE)の将来を見すえて
〜過去からの教訓、将来展望をもっての遂行〜
初めに
〔日本語の挨拶に、簡単な自己紹介、講演内容の背景と紹介〕(2−3分)

英語に切り替える

廃電気・電子機器リサイクル指令案(WEEE)と危険物質指令案(RoHS)に対する英国政府の見解
議長、ご出席の皆様

社会から排出される廃棄物が急増していることは誰もが気づいている。これが環境に直接与える影響だけでなく、様々な機会で、我々自身が不必要に天然資源の枯渇に加担しているという懸念も高まっている。このことから、政府の環境問題の論議では、「資源生産性」がしばしば緊急のテーマとして取り上げられている。簡単に言えば、手に入る、限られた資源を最大限に活用する試みと定義できる。WEEEとRoHS指令案は、生産者に、製品のエンド・オブ・ライフの廃棄費用を認識させ、その負担を義務づけることで、「資源生産性」の問題の解決を支援する。英国政府はこれらの環境関連法を広い文脈で理解し、6月7日の欧州連合環境閣僚会議で合意したWEEEとRoHSを全面的に支持している。もちろん、若干文言の変更を望む箇所もあるが、どんな交渉でも完全なソリューションなどというものはない。

英国政府は、これらのEU指令が求める高度なリサイクル目標と厳しい処理基準を満たすことは、環境に多大な利益をもたらすと確信している。1998年に委託した研究で、誰もが本能的に予想できる環境利益がはっきり立証された。指令が対象とする主カテゴリーにまたがる8つの代表的な製品を精査し、英国で現在実施されている方法と比べ、対象製品の収集、処理、リサイクルが環境に利益をもたらすかどうかを考察した。このスライドにあるように、検討した8製品のうち6製品で、WEEEシナリオは10%以上改善し、空気の酸性化などは50%以上も改善したと結論している。テレビは、現在の技術でブラウン管からリン酸塩コーティングを除去するエネルギーを考えると、最も不確かな製品である。ここで重要なことは、ほとんどの製品について、WEEE指令は真の環境利益をもたらそうとしていることが重要であるという点である。国内で操業するすべての企業の競争力保護というニーズを考慮しつつ、実用的で公正な制度を全国的に実施して環境利益を実現することが英国政府の最大の関心である。また、欧州各国と同一の土俵を確保するという決定も下した。この問題については、過去の経験を少し説明してから再び考察する。

英国におけるリサイクル(スライド)
英国のリサイクル率は、残念ながら望んでいる水準を下回る。現在、市廃棄物の約15%を有効活用しているが、その内の約9%がマテリアル・リサイクル、残りの6%が主にエネルギーの有効活用である。これまでの実績をもう一歩進めるために、英国政府は一般廃棄物リサイクルに関する厳しい目標値をすべての地方自治体に課した。ご覧のように(スライド)、この目標値を達成するには、リサイクル率を2005年までに25%に、2015年までに35%に引き上げなければならない。これを達成できない地方自治体には罰金が課されることになるが、それ以外のインセンティブもある。例えば、埋立処理地の環境基準を引き上げるという欧州全域を対象とする指令に応じるべく、英国は埋立処理地に送る廃棄物の減量にも取り組んでいる(スライド)。これが地方自治体に課したもうひとつの目標で、リサイクル率の引き上げを推進することになろう。埋立地に運ぶ廃棄物1トン当たりに課される税率も徐々に引き上げる。現在の税率は1トン当たり12ポンドであるが、2004年には15ポンドに引き上げる予定である。英国も、各国と同様、廃棄物戦略の中核であるリサイクル目標値の実現には地方自治体が重要な役割を果たしていると言える。

以上の簡単な説明からも、WEEE指令は、埋め立て処理からリサイクルへの転換という英国の目標に直接寄与することで、我が国の廃棄物戦略に適合していることは明らかであろう。1998年には約91万5,000トンの電気器具が家庭廃棄物として排出された。WEEEが毎年3%を超える割合で増えている現状から、100万トンの大台を超えるのは時間の問題である。この廃棄物に占めるプラスチックの割合は10〜15%と推測される。

他の国と同様、廃棄物の大半、実に80%以上が、大型家電製品、コンシューマー・エレクトロニクス、IT製品から排出され、このスライドから分かるように(スライド)、玩具などの商品は1%程度に過ぎない。収集という観点からもっと憂慮されるのはこの種の製品である。多額の収集費用がかさみ、環境利益を上回ることにもなりかねない。さらに、消費者はゴミの分別でさらに大きな役割を求められることになるが、人々の啓蒙・教育には時間がかかる。

しかし、これは、新たな規制義務に対応するだけでなく、皆様自身の利益を最も忠実に代表するソリューション探しを我々と一緒にビジネスとして追求できる真のチャンスでもある。材料やプラスチックの分別を推進し、そのためのインフラへの投資が必要になろう。ミックス・プラスチック(分別出来ないプラスチック)は、英国にとって特に重要な課題となろう。焼却によるエネルギー回収は、今後もプラスチックの有効活用の方法として利用されるであろうが、ローカル・コミュニティと綿密に協議し、キャパシティ拡大の決定が必要になろう。しかし、いかなる決定であれ、ソリューションには他の部門で進んでいる状況の考慮が必要であることはいうまでもない。英国では、包装廃棄物は特に重要であり、プラスチックの有効活用とリサイクルを積極的に進めなければならない。以上をふまえ、包装廃棄物のリサイクルに対する英国の取り組みを簡単に紹介するが、今後のWEEE指令の実施方法について有用な先例となれば幸いである。

包装及び包装廃棄物指令(94/62/EC)(スライド)
皆様もご存知の通り、有効活用とリサイクルを推進するための欧州共同体レベルで作られた法律の最初の対象になった廃棄物のひとつが包装廃棄物である。1994年に最終的に採択された包装及び包装廃棄物指令は、次の2つの法律によって英国の国内法に組み入れられた。製造者責任法(1997)と包装廃棄物(必須要件)法(1997年)(スライド)である。この法律には2つの目的がある(スライド)。

(1) 環境保護(有効活用とリサイクル率を高め、重金属等の有害物質の使用を制限する)
(2) 国内法との調和をはかり、欧州単一市場を守る

なぜ包装なのかという疑問が多くのオブザーバーから寄せられている。包装材は数多くの廃棄物類のほんの一部でしかない。包装材が環境を破壊しているという意見の背後には政治的動機があったというのが正直な答えであるが、現実にはより大きな違反者がいるのは当然である。英国の包装業者協会(The Industry Council for Packaging and the Environment、以下「INCPEN」)は、一人一人の消費者が大型エンジンのガソリン車から燃費の良い小型車に切り替えることにより、ガラス瓶のリサイクルを400年間続けるより、エネルギーが節約できるという話を思い出させる。とはいえ、英国では毎年1,000万トンに近い包装廃棄物が製造されており、有効活用とリサイクルをせずに埋立処理されると、大量のエネルギーや材料が無駄になる。

1994年の指令は、全加盟国に対し、2001年末までに市販されている包装廃棄物の50〜60%を有効活用し、全体の材料リサイクル率を25〜50%に引き上げるという重要目標を義務づけた。主要包装材のリサイクル率も15%以上にすることが義務づけられた。このスライドは進捗状況を示している。ご覧のように、すべての材料のリサイクル率はかなり上昇しているが、プラスチックの成績は今も低迷したままで、プラスチックの成績向上が望まれる。

欧州包装廃棄物法に対する英国のアプローチ
英国は、最低費用で目標実現を目指す製造者責任制度を通じて、欧州共同体の包装廃棄物に関する法律を実施する方法を選んだ。これは、市場に基づくアプローチで、包装チェーンの事業者である原材料メーカー、加工業者、荷造業者−フィラー、小売業者が、添付スライドに示す割合で総コストを分担する。

製造者責任制度は、1年間の包装材の推定総販売量から一定量を決めて有効活用・リサイクルするという法的義務を包装チェーンの事業者に課すことで実施される。

「包装廃棄物有効活用証明書(以下「PRN」)」が証明書となり、商品として取引できる。英国事業者の2000年のPRN購入費用は3,500万ポンドで、ほとんどのEU加盟国を下回る。

電気電子機器包装材から得た教訓
ここで、ある特定市場を基にしたソリューションが包装廃棄物に対してうまく機能したとしても、それがWEEEに適合できるのだろうか。そうであるなら、そのコストはどうなるか、また、市民の視点からみて、WEEEプラスチックのリサイクルにどんな影響がでるのかという疑問が生じる。

その答えは、簡単に言えば、「ノー」であろう。包装廃棄物に対する規制を直接適用することはできない。しかし、テーマのバリエーションは可能かもしれない。実体は、WEEE指令の要件は、包装廃棄物とはいくつかの重要な部分が異なり、製品自体も全く異なる。例えば、(スライド)、包装材は製造されてから数カ月以内に消費されるが、電気機器は販売してから20年も使用できる。WEEE指令は分別収集した電気機器廃棄物のみに適用されるが、包装廃棄物指令は市販されたすべての包装材に適用される。この2点からだけでも、英国が包装廃棄物制度をWEEEに当てはめて対処するのは難しいことは明らかである。しかし、ここには重要な教訓が含まれる。

まず、英国の包装廃棄物規則はあまりにも複雑すぎるため、コスト削減が実現されても理解しにくいという批判が産業界から出ていることを十分認識している。二番目に、包装材収集に関するデータの管理は煩雑で、多大な時間と努力が必要であることも深刻に受け止めている。三番目に、英国政府の望む新しい収集・再処理設備への民間投資は、PRN制度の見込みを下回る成果しかあがっていないことを認識している。

最後のポイントは、PRN価格が予想を下回る低い価格であることが理由である。これには、2001年以前に設定されたリサイクル目標の実現には、収集・再処理設備が過剰であることが反映されている。過剰供給は価格下落をもたらすことはエコノミストの常識である。しかし今年は初めて供給逼迫に転じ、価格が上昇しつつある。これが、今後の目標値引き上げに対応する新たな設備投資のきっかけになることを望んでいる。

総体的に、問題の本質は再処理能力の欠如ではなく収集設備の不足にある。ほとんどの包装廃棄物は業界だけでなく、家庭系廃棄物類の相当部分を占めるペットボトルを収集するボトルバンクなどの「持ち込みシステム」からも収集される。しかし、有効活用率とリサイクル率の目標が高くなれば、家庭からの収集率を高めることが不可欠となり、効果的な実施には、英国の消費者の姿勢を一変する必要があろう。

初めて日本に住み始めた時、ゴミの分別が厳しく求められていることに驚かされた。これは今でも多くの英国民にとってなじめないものである。それは、英国の消費者の環境問題への関心が低いためではなく、英国は日本と違って山岳地形のために埋め立て処理地に困らなかったためである。つまり、経済的な観点から代替策を見つける必要性がなかったのである。しかし、資源生産性の重要性に対する認識の高まり、資源生産性が新たなビジネスや消費者や政治的な需要を生み出すというプラスのイメージを勘案し、家庭にさらなる役割を奨励し、廃棄物問題への強い関心を維持する必要がある。プラスチックが果たす役割を中心とした人々の教育が重要な鍵になろう。

各種材料のなかで包装材は優先対象とされていると述べたが、WEEEのなかでプラスチックも優先対象となっている。しかし、これらに関する議論の全てが我々に聞こえてこないという不安を感じている。

英国におけるプラスチック材料のリサイクル
自分の意見を裏付けるためにライフサイクル分析(LCA)の各種研究等を引用し、すべてのプラスチックを悪者扱いする人も多い。これは難しい問題である。ある特定環境においてプラスチックが深刻な影響を及ぼすということは間違いではないが、それが常に悪いという結論を出すのは難しい。そのため、英国では材料の用途をケースバイケースで判断してきた。LCAは政策決定者が利用できるツールのひとつにすぎない。そして、どんな方法にも欠点はある。ある材料全部をエコ・フレンドリーとかそうでないと決めつけるのは正しくないと私は考えているが、現在、この人たちに、プラスチックは重要な役割を果たしていると説得する必要はないであろう。ではあるが、プラスチックのメーカーやユーザーは、政治家、時には疑り深い人々を説得する役割があることを力説したい。このような深い理解は、積極的なリサイクルと天然資源保護の動きに由来するこれまでの活動や今後の活動から生まれるものである。他にも様々な機会がある。民間部門独自の活動もきわめて重要な役割を果たす。

プラスチックに含まれる臭素系難燃剤(スライド)
例えば、英国は現在も、プラスチックへの臭素系難燃剤の使用に関する判断基準をリスクアセスメントの結果を求めたいと考えている。特定の種類のプラスチックを禁止するには相当の理由が必要である。一部のプラスチックが不安材料になっているという理由で、臭素系製品全部を禁止するのは正しくないという主張を全面的に支持しているが、データの提供、重要グループに対するロビー活動、オープンで透明な対話を実現するには皆様の支援が必要である。ある製品に問題が生じた場合にその事態に適切に対応することは利益になる。そして、不安を感じる理由がないとなれば、信頼性はさらに高まることになる。

RoHS指令案がこのまま成立すると、PBBとペンタBDEの2種類の臭素系難燃剤を含むプラスチックは無期限に禁止されることになる。

英国は、他の2種類の臭素系難燃剤、つまり、オクタBDEとデカBEDの禁止決定に対し、加盟国役人の技術委員会の検討結果を根拠に激しく反対してきた。というのは、この2つの製品のリスクアセスメントはまだ終わっていないからである。英国は、RoHS指令が採択されたら、緊急優先事項として(確かに、指令自体の文言にもこの緊急性は表現されている)オクタBDEとデカBEDを技術委員会が再検討するよう求める予定である。

WEEE指令の現在の文言では、臭素系難燃剤を含むプラスチックは、分別収集WEEEと分別すべきであると書かれている。欧州議会が、来年早々に開かれる第二回指令案検討会でこの変更を検討するかどうか定かではない。いずれにせよ、英国政府は、どういう形でこれを実施するかを検討せざるを得なくなろう。このような分別作業をコスト効果の高い方法で実施できるのだろうか。他に代替策はあるのだろうか。例えば、リサイクル業者が指摘するように、難燃剤を含むすべてのプラスチックを分別する手間を経ることが実証できるだろうか。これらの問題は皆様にも是非検討していただきたい。

英国のプラスチック・リサイクル(スライド)
1998年の英国のプラスチック消費量は約390万トンで、主用途は、スライドに示すように6つある。総消費量のうち約280万トンが毎年廃棄物になると推測される。また、130万トンがプラスチック包装材で、その約10%がリサイクルされている。

再生プラスチックの約52%がポリエチレン・フィルムであることはご想像の通りである。

英国のプラスチック・リサイクル能力は、小企業を中心に運営されている機械的リサイクルによる能力である。供給原料のリサイクルも若干含まれるが、これまでその割合は非常に低く、この方法によってEUが推進する目標値の実現は不可能であろう。包装廃棄物に関する最近のEUレベルの話し合いでこれが変更された。英国のプラスチック・リサイクル能力を高めようとする業界のイニシアティブも実践されて(スライド)、地方自治体の役割も高まっている。1999年には、41%の地方自治体がプラスチックボトルの収集事業を実施しているが、WEEEに関する課題やその他関連指令を実現するには、使用済みプラスチックの現在の処理能力を大幅に拡大する必要がある。

英国政府は、電気電子機器業界とプラスチック業界によるエンド・オブ・ライフのWEEEプラスチック問題の解決努力を評価している。WEEE指令の目標実現のためには、エネルギーの有効活用だけに依存することはできないため、マテリアル・リサイクルも含めなければならないであろう。日本のコピー機メーカーが販売しているオフィス用コピー機には、再生プラスチック(臭素系難燃剤含有)が25-30%も使用されていると理解している。日本のメーカーが、欧州市場でもこのような革新的製品を発売することを期待している。プラスチックのリサイクルを効率的に進めるには、最終消費市場の存在が不可欠である。皆様が、ソリューションを作り、監督官庁と市場のデシジョン・メーカーに伝え、是非このような市場を実現していただきたい。これに関して、臭素科学環境フォーラムが、様々な臭素系難燃剤を含む各種プラスチックのリサイクル性を試験し、マテリアル・リサイクルやプラスチックから臭素を回収するなどのソリューションを開発するプログラムを進めているが、非常に歓迎する。私の後で講演されるタンゲ博士の講演からも多くのことを学べることを期待している。

WEEE指令:英国の次の措置
今朝のセッションで、ヘルムット・シュヌラー博士からWEEE指令の詳しい説明があったので、もう一度繰り返すことは避けるが、我々自身が重要な義務を再認識し、この指令の目的を強く意識することは有用であろう。

(スライド)日本企業やMETIの友人との様々な交流から、日本は、限られた数の大型家電製品(White and Brown goods)商品の収集、処理、リサイクルに傾注する方針を固めたことを学んだ。このやり方は環境保護を大きく前進させ、目的を拡げる前に様々な経験を積んで学ぶ時間が持てるという意味で魅力がある。英国政府のなかでWEEE指令実施計画の作成任務を負った1人の役人として、日本の方針は非常に魅力的な響きを持つと言わざるを得ない。しかし、EUでは、一歩前に進んですべてを包含したひとつの制度を作るための協力を進めており、歌うテディベアのぬいぐるみだけでなく、洗濯機もテレビにもうまく対応しなければならないのである。確かに野心的計画かもしれないが、先例がないわけではない。例えばノルウェーは、既に似たような内容の法律を制定している。しかし、対象とすべき製品の規模をみると圧倒されてしまうと告白せざるを得ない。指令の実施を阻む最大の難問は、分別収集したWEEEだけを対象としている点である。すなわち、WEEEを家庭用のゴミと一緒に廃棄するとこの指令の対象にならず、資金調達方法を限定し、少なくとも複雑化することになる。

処理とリサイクルの費用を製造業者に負担させる最も公正な方法は、分別収集WEEEを特定し、加重することだという議論がある。しかし、実際には難しい方法であると思われる。冷蔵庫、テレビ、洗濯機は大型家電で理論的には見分けやすい。しかし、小さな玩具や時計が深刻な問題を引き起こす。見分けにくく、製造会社が操業中止していることも多く、製造業者が専門輸入業者である場合は特にその可能性が高い。そのためには、指令の「カテゴリー」に相当する製品クラスごとに方法を変えるか、製品の販売数量に応じて何らかの支払を義務づけることが必要である。最終的なEUのWEEE指令が、製造者責任の支払いを義務づけるかどうかは、各加盟国に委ねられることになろう。

製品販売時に製造者に一定料金(いわゆる「ビジブル・フィー(目に見える料金)」)の支払いを義務づけ電気機器廃棄物の処理とリサイクル費用を負担させる制度は、オランダ等の国々で歓迎され、英国も検討すべき制度であることは確かである。しかし、問題がないわけではない。例えば、料金の適正レベルをどこに設定するかが難しく、制度の管理は複雑で、これが新税とみなされるのではないかという政治的配慮もある。また、製品のリサイクル性を高めるという製造者の意欲をかきたてないという議論もある。意欲を高める唯一の方法は、リサイクル性の高い製品に対するビジブル・フィーを大幅に低く設定することである。しかし、こうするとさらに複雑な制度になる。しかし、多くの製造者がおそれる「ただ乗り」の問題が出てくる。実施についていかなる決定も行われないうちに、英国はあらゆる選択肢を検討し、すべての関係者と協議したいと考えている(スライド)。このスライドは我々の大まかなタイムテーブルを示している。すでにいくつかの諮問グループを設置し、指令の最終合意よりある程度前の時点で実施方法について正式に提案をしたいと希望している。これは2002年夏になると見込まれる。

結論
WEEE指令、包装廃棄物指令及びエンド・オブ・ライフ自動車指令は、プラスチック部門にとって、リサイクルが必要なプラスチックが大幅に増加することを意味する。そのためには、収集・再処理設備の拡大が必要になろう。前に述べたように、これは再処理部門にとって大きなビジネスチャンスをもたらす。しかし、リサイクルはエンド・マーケットがなければ意味がない。英国では、あらゆる材料について、リサイクル製品(現在規格外の製品を含めて)の使用を妨げる障害を除去することが必要である。また、新規市場の開発も推進しなければならない。

英国政府は、これらをふまえ、WRAP(廃棄物・資源アクション・プログラム)を発足させた。WRAPは非営利保証有限会社で、この重要な問題の解決を委託されている。今年4月に正式に業務を開始し、最初の3年間で4,000万ポンドの予算を得ている。このプログラムは、プラスチックを含めた7つの需要テーマをかかげている。主目的は以下の通り。

●ミックス・プラスチックのリサイクル量を毎年20,000トン増やす
●部門別に、リサイクル材料のコンテンツ率の引き上げ目標を設定する
●リサイクル樹脂と木材又はプラスチックを使った合成製品を製造する1つ以上の新規技術を探す
●ペットボトルのリサイクルを大幅に増やす

WRAPとの協力は、双方に目標達成という貴重なビジネスチャンスをもたらす。WRAPのプラスチックに関係する目標実現への意見をぜひ皆様から伺いたい。WRAPは新しいWEEE指令が義務づけるプラスチックのリサイクル率の実現を支援する機関であり、製造者責任義務を負う皆様自身のニーズを満たすために英国で開発された最高のテクノロジーであることを理解する機会であると是非認識していただきたい。

〔日本語で〕終わりに
議長、ご出席の皆様、私の講演がWEEE及び関連指令に対して英国が実施しているアプローチの一端をご理解いただければ幸いです。本日最後の質疑応答のセッションで、皆様からのご質問にお答えしたいと思います。


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