主要難燃剤解説
臭素

臭素の紹介
 臭素を含む物質が最初に利用されたのは古代ローマ時代で、海洋中のムラサキ貝が自然に作り出す化学物質から紫染料を作るために抽出されました。この抽出コストは非常に高く、この染料を使った紫の服は大金持ちしか買うことが出来ませんでしたので、この紫はロイヤルパープルと呼ばれるようになりました。
 臭素は1826年前までは化学元素としては発見されませんでした。
 フランスの化学者アントワープ・バラールが塩素から分離しました。化学元素の形では臭素は常温では揮発性の高い、赤茶色の液体です。しかしながら、自然には化学元素の形では臭素は発見されることは無く、他の物質との化合物の形である臭素化合物として知られています。これら臭素化合物は商業用臭素化製品を作るための原料として使われています。

臭素化合物の日常的な用途
・水浄化剤
臭素化合物の主要用途の一つは水浄化/殺菌剤で、塩素の代替となります。塩素の代替です。臭素化合物は水泳プールや温泉の水処理剤に使われますし、又、工業生産工程での藻やバクテリアの成長を制御する為にも使われます。

・農業
臭素化合物は効果的な殺虫剤で、農業の土壌薫蒸剤、特に果物生育、又、貯蔵した穀物や農産物への虫の被害を防ぎます。世界貿易での膨大な量の農業製品は検疫上の強制的規制を遵守するためには臭素化合物が利用されます。臭素化合物は私たちが目に止めない幾つかの農業用化学品を作るための中間品として利用されています。

・自動車・過去未来
過去においては、臭素化合物は加鉛燃料のアンチノッキング剤の成分として利用されていました。しなしながら、排ガスの環境影響を減らすために鉛が燃料から取り除かれるようになり、この用途は激減しました。臭素化合物は、現在、ゼロエミッションを創るために計画された電気自動車のバッテリーとしてテストされています。このバッテリーは発電所の電気貯蔵装置としての利用も出来ます。

・ヘルスケアー
臭素化合物の主要な用途としては医薬品の製造があります。臭素化合物は多くの店頭販売薬並びに処方薬の重要な成分で、鎮痛剤、鎮静剤及び抗ヒスタミン剤の原料です。これらの薬の幾つかは肺炎やコカイン常習者の処置に有効であることが証明されています。

・写真
臭素のもう一つ重要な用途は写真フィルムの生産です。白黒写真フィルムの光感度は臭素銀化合物に拠ってもたらされています。

臭素系難燃剤
・新しい材料の紹介
20世紀において、家具メーカー及び家電メーカーは木材や金属などの伝統的な材料から新しい材料であるプラスチックを家電用に、又、ポリウレタンフォーム並びにファイバー・ベースの詰め物は家具用途に変わって行きました。これらの新しい材料は多くの利便性を提供する一方、一つの問題を抱えていました。従来の材料と比べると遥かに可燃性があることです。つまり、両方の材料は簡単に火がつき、一度火がつくと、直ぐ燃え出してしまい、人が逃げ出す時間が殆んどありません。

・家庭での難燃剤
難燃剤の開発はこれらの材料を安全に利用することを可能にしました。難燃剤は材料の製造中もしくは製造後に加えられる化学品で、発火チャンスと燃焼速度を最小に抑えます。電気製品、家具製品並びに織物製品での難燃剤の利用は火災から人命を守っています。

・保護された室内装飾家具及び電気製品
英国は室内装飾家具(ソファーなど)に関係する深刻な火災を何年間も被った後、1988年より高い燃焼基準に室内装飾家具をあわせる法律を作りました。内容は家具の詰め物及びカバーは難燃化しなければならない、と言う事です。古い家具はより安全な新しい家具に替わり、法律は高い効果が得られたことを証明しました。従来はまだ古い室内装飾家具に関係した火災が1,400件近くもあり、500人以上が負傷し、40人が亡くなっていました。1997年は、年間を通じて新しい室内装飾家具に関係した火災は3件だけで、一人が亡くなり、一人が負傷しました。
最近の推定では難燃化を要求した新しい室内家具導入の法律は過去12年間で1,800人の生命を救ったとも言われています。
けれどもヨーロッパでは英国だけが室内装飾家具の難燃化を要求している唯一の国です。同様にテレビの場合は、アメリカ合衆国ではより高い安全基準の導入に拠り、テレビに関係した火災事故を73%減少させました。けれども、ヨーロッパにはまだその様な高い基準が無く、テレビに関係した火災に拠る死者及び負傷者の数は増加しています。

・公衆安全
難燃剤は家庭での重要性ばかりでなく、多くの公衆の場所で火災安全を提供しています。映画館や劇場の様な近代的な設備の中の織物家具が難燃化されていないと言う事は殆んど思いも掛けない事でしょう。同じことが種々の輸送手段、自動車、飛行機並びに電車内の調度品に当てはまります。
しかしながら、最も傷つきやすい人々が居る学校、老人ホーム並びに病院で人々を守るために難燃剤は多分最も重要でしょう。

・なぜ臭素は難燃剤として効果があるのでしょうか?
難燃剤を作るために使うことが出来る物質はたくさんありますが、多くの場合、臭素が最も効果があります。燃焼過程での独特な相互作用を通して、臭素は殆んどの代替物質より効果があり、材料に添加する難燃剤の必要量は少なくて最高の難燃効果を与えます。これにより、材料本来の特色である色、強さ並びに耐久性はそのまま維持できます。

・難燃剤の将来
難燃剤は広範囲に渡る製品を火災から守るために使われます。即ち、テレビ、コンピューター、ラジオ、並びにステレオセットなどの電気・電子部品や室内装飾家具の織物や発泡材、それにカーペットにも使われています。世帯所有の電気・電子部品、特にコンピューターは増え続けていくことから、臭素系難燃剤は火災から人々の生命を守るという役割が今後とも増えていくと思われます。
※注意
 この難燃剤解説は、欧州難燃剤協会(EFRA)作成のFlame Retardant Fact Sheetをベースに、現時点で入手できる知見を基に日本難燃剤協会が作成しています。この難燃剤データ表は、健康・環境・規制情報等を提供することを目的にしておりますが、製品安全データシート(MSDS)・法的な要求文書等ではなく、また記載データは製品規格を示すものではありません。

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