主要難燃剤解説
ハロゲン化リン酸エステル

特徴・要約
 ハロゲン化リン酸エステルは触媒の存在下で、アルキレンオキサイドとオキシ塩化リンを反応させる事によって製造されます。
 
製造メーカーによって各種用意されています。

多く使用されているものは以下の5種の難燃剤です。
トリス(クロロエチル)ホスフェート
(TCEP)
CAS番号 115-96-8
トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート
(TCPP)
CAS番号 13674-84-5
トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート
(TDCP)
CAS番号 13674-87-8
テトラキス(2クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート
(V6)
CAS番号 38051-10-4
ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート
(CR-504L)
CAS番号 184530-92-5
此れ等の難燃剤は、世界各地で各種の難燃規制に適合する硬質、軟質ウレタンを得る為に使用されています。リン、塩素が共に含まれる事で、固相、気相共に働き、要求される難燃性を得易くなっています。
製品は何れも液体で、ウレタンとは反応しません。

応用
塩素化リン酸エステルは、製品の性能及びフォーム製造時の作業性に何ら悪影響を与える事無しに、小さな熱源からの発火抑制や、小規模の燃焼試験に非常に有効です。
 
ポリウレタン・フォームは、他の多くの有機化合物と同様に酸素中で加熱されれば、発火します。難燃剤の添加は、着火性、燃焼速度、発煙性、消火性等に大きな効果を与えます。
 フォームの最終用途や、要求される試験規格によって、リン酸エステルは選ばれます。フォームの比重と、求められている試験方法に対する難燃剤の効能で一概には言えませんが、添加量は通常5-15%です。

軟質フォーム :ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤の主用途は、家庭内や、公共の場所で又は自動車の内装で使われる軟質フォームです。具体的には、装飾家具、ソファー、車のシート等です。
断熱硬質フォーム :ハロゲン化リン酸エステルは、サンドイッチ・パネルや現場発泡によって形成された断熱層が建築基準を満たす為に使用されます。
不飽和ポリエステル、ゴム、繊維の難燃処理にも使われます。

安全性情報
ハロゲン化リン酸エステルは、既存化学物質のリスク評価、削減を目指したEU指令#793・93で第2次、若しくは第4次評価候補物質として取上げられています。
ハロゲン化リン酸エステルは、TCEPのようにEUの決定で、又はTCPP、TDCP、V6のように個々の生産者から出されている毒性、環境毒性の結果に基いて候補となっています。 EUリスクアセスメントの中でこれらの化合物の分類はバランスの取れたものになると考えられています。
ハロゲン化リン酸エステルには神経毒性は確認されていません。
最新の安全性分類については、個々の製品のMSDSを参照して下さい。

利点
 英国通産省発行の「据置、造り付け家具に於ける火災防護条例の効果」1988年版には、「条例に準拠した家具の持つ着火耐性及び出火後の火炎拡大の抑制効果により、避難に使える時間が確保され、その為に1988年から1997年の10年間に1,860人の生命が救われ、5,770人が怪我をせずにすんだ」と報告されています。

ハロゲン化リン酸エステルの使用によって以下の国際的な難燃基準を満たす事が出来ます。
軟質フォーム: 英国BS4735、米国UL94-HF1、イタリアCSE-RF4、1988年消費者安全法、BS5852クリブ5、カリフォルニア法令117。
自動車用フォーム: FMVSS-302。
硬質フォーム: BS476の第6、7部で要求される物性、仏国NFP92-501、独国DIN-4102。

論点
[各国若しくは国際的な動き]
エコラベルによる自主規制以外に、世界中何処にもハロゲン化リン酸エステルを難燃剤として使用する事に規制は在りません。
ハロゲン化リン酸エステルは国連のHPVC計画に取上げられています。幾つかの化合物はICCA及び米国EPAの調査リストに入っています。
ハロゲン化リン酸エステルは、英国の「The National Academy of Sciences Report」、オーストラリアの「Priority Existing Chemicals assessment report」や「U.B.A」のような各国独自のリスク評価活動の対象となっています。EFRAはEUのリスクアセスメントが最終報告となり各国が其れを受容れる事により、重複するテストが行われなくなる事を、動物愛護の観点からも望んでいます。
[産業界の動き]
家具からの難燃剤の暴露 :英国Surrey大学とBolton大学で行われています、幾多の家庭製品に共通して使われている難燃システムからの難燃剤の放出と暴露の研究が、使用者の暴露(の可能性)への答えと、人類への暴露及び環境中での環境毒性から見たリスクアセスメントに役立ちます。
スウェーデンの「国立試験研究所」が、難燃、非難燃家具の全使用期間に亘る環境への負荷について試験を行っています。

供給会社/出典 他
日本難燃剤協会(FRCJ)
〒104-0031 東京都中央区日本橋2-16-3 18山京ビル3階
TEL : 03-3517-2232 FAX : 03-3517-2560
E-mail:info@frcj.jp / URL: http://www.frcj.jp

ハロゲン化リン酸エステルの供給を行っている日本難燃剤協会のメンバー
ICL-IP JAPAN 株式会社
〒112-0004 東京都文京区後楽2-3-21 住友不動産飯田橋ビル5階
Tel:03-6801-8430 Fax:03-6801-6970
URL: http://www.icl-ipjapan.com/
アルベマール日本(株)
〒100-0011 千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル16階
TEL : 03-5251-0796 FAX : 03-3500-5623
URL:http://www.albemarle.com/
大八化学工業(株)
〒541-0046 大阪市中央区平野町1丁目8番13号(平野町八千代ビル)
TEL:06-6201-1451   FAX : 06-6201-1458
URL:http://www.daihachi-chem.co.jp/
※注意
 この難燃剤解説は、欧州難燃剤協会(EFRA)作成のFlame Retardant Fact Sheetをベースに、現時点で入手できる知見を基に日本難燃剤協会が作成しています。この難燃剤データ表は、健康・環境・規制情報等を提供することを目的にしておりますが、製品安全データシート(MSDS)・法的な要求文書等ではなく、また記載データは製品規格を示すものではありません。

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