主要難燃剤解説
デカブロモジフェニルエーテル

特徴・要約
デカブロモジフェニルエーテル(以下DBDEと略すが、他にDBDPE、DeBDE、デカブロモジフェニルオキサイドとも表現される)、C12Br10O,CAS-No.1163-19-5は、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDPEsあるいはPBDEs)類に属しています。商品化されたPBDE製品にはDBDE(Br=10)、OBDE(Br=8)、PeBDE(Br=5)があり、その他のPBDEs(例えば、Nona-, Hepta-,Hexa-,Tetra-,Tri-,Bi-,MonoBDE)は商業的には製造されていません。また、わが国ではPeBDEは既存化学物質に無く、新規物質登録もされていません。OBDEも使用中止され、現在ではDBDEのみが使用されている状況です。

応用
DBDEは臭素含有率が高く、難燃化効果が高いので、電気及び電子機器用のプラスチック、運輸分野(例えば、自動車)、建設/建物及び織物(例えば、裏面処理)など多くの分野で使用されています。

安全性情報
環境/健康の側面
DBDEは通常の化学物質であり、わが国で特に法的な制限はありません。EUでも危険物令(67/548/EEC)に分類されない一般化学物質です。

DBDEはそれを含む難燃ポリマーから容易に抽出されないので、環境への暴露は非常に低いと言えます。

DBDEの急性毒性は非常に低く、また胃腸管からの吸収はごく僅かです。従って、DBDEの人へのリスクは大きくありません。
(WHO,1994 http://www.inchem.org/documents/ehc/ehc/ehc162.htm)。

250-500℃の温度範囲で、PBDEsはジベンゾフランを生成する可能性があります。(Hutzinger,1990)。しかし、実際にはその放出を科学的にコントロールすることが容易に出来ます。

研究によれば、PBDE含有プラスチックの焼却が家庭用ゴミ焼却炉に腐食の面で特別の悪影響を与える事も無く(TNO Netherkands,2002)、又ダイオキシンあるいはフラン類の発生レベルにも影響を与えることはありません。また、処理の仕方によっては、エネルギー回収に役立てたり、さらには含まれる臭素の90%を回収することが出来るとの研究もなされています。(Karlsruhe研究センター、2002年 http://www.cefic-efra.com/pdf/TEC%20Report%208040%20GB.pdf)。

ドイツでのある研究によれば、DBDE(標準処理温度199-227℃)を含有するポリスチレンは”化学製品禁止令”(Chemikaliensverbot-Verordnung)で要求されているダイオキシン/フランの規制値を超える事無く再利用出来ます。しかも、再利用中にDBDEが低位のPBDEsに分解する事も無く、作業現場でのダイオキシン/フラン暴露についても規制値内に十分入っていました。(”臭素化難燃剤を含むプラスチックの最終分解物”参照。 http://www.cefic-efra.com/code/docs.html

”PBDFがDBDEを含有するプラスチックの生産に従事する労働者の血中で発見された事例が報告されていますが、こうした暴露に対する健康への悪影響は関連づけられてはいません。化学工学による制御をうまく行なえば、労働者のPBDFへの暴露を防ぐことが出来ます。”(WHO、1994)

EU安全性評価:健康に関する2002年の最終報告は次のように結論づけています。即ち、DBDEは人の健康に危害を引き起こすことがなく、また難燃剤としての現在の用途全般にわたる以下の5つの局面全てについて、さらなる情報や試験の必要が無いとの結論です。(?@製品の生産、取り扱い及び使用中の労働者への暴露;?A消費者製品使用時の消費者への暴露;?B製品の物理、化学的性質全般について;?C環境を通じての人への間接的暴露全般について;?D複合した暴露に対して)環境についてもこの報告は次のように結論しています。DBDEは、既存の用途において、環境、水、空気あるいは土壌や堆積物及び下水処理物中にも毒性をもたらすことが無い(結論ii)。これは基本的に製品に生体吸収性が無い事が大きな理由であり(生体内に取り込まれたり保持されたりしない)、従って生体蓄積性ではない。しかし、安全性評価手続きでは生体内蓄積(はやぶさのさらなる情報が必要であると指摘されています。これらの問題に取り組む作業が進行中です(2003年)。

しかし、生体蓄積性は全体としては懸念されていません。WHO(1994)には、”DBDEは肉、皮膚、内臓に測定可能なほど蓄積しなかった(Brosieretal.,1972;Norrisetal.,1973,1974,1975a)”との研究報告があります。

DBDEが環境中で脱臭素化し、低位の臭化物であるtetra-及びpenta-BDE生成するという仮説を支持する証拠は何もないし、最近の研究ではそれが事実でないことが確認された報告があります。
(Frauenhofer Institute,Hannover,2003)。

利点
DBDEは火災への安全が高い、コスト対効果が高い、広範な用途に適合、低毒性、低溶解性、環境移動性が少ない、再利用が可能などの利点があります。

論点
問題点
 特別な注意が必要な理由
臭素を含む化合物なので、温度制御されない工程では臭素化ジベンゾダイオキシン、あるいはフラン類(PBDD/F)を生成する可能性があります。従って、DBDEを含む全てのプラスチックの取り扱い作業、例えば、組立て、改造、洗浄、回収、再利用は厳しい温度条件のもとで実施されなければなりません。

”DBDE及びこの化合物を含む製品の生産にかかわる作業員は、適切な産業衛生基準、業務上の暴露の監視、エンジニアリングによる制御などを適用することにより、暴露から保護されるべきです”(WHO、1994 http://www.inchem.org/documents/ehc/ehc/ehc162.htm

DBDEは臭素化合物なので、ダイオキシン類/フラン類の生成を誘引する種々の条件は、その加工処理及び廃棄に際して回避されるべきです。

 規制措置の進展
EU:ヨーロッパ委員会は、1993年のヨーロッパ議会の「火災に対する安全性、環境安全性の再評価に関する懸念を考慮したPBDEs(DBDEを含む)の使用を制限する提案」を撤回しました。EU安全性再評価については上記を参照してください。DBDEは、EU安全性評価プロセスによる結論がでるまで、EU WEEE及びROHSの政令の影響を受けません。

D:「温度制御されない工程ではダイオキシン/フラン類生成の可能性があるので、DBDEを難燃剤としてポリマーに使用するのを中止する」とする、VCIによる1986年の自主協定。

OECD:取引されるDBCDの”純度が97%以上であること”(1995)を確実にする方策が第一次OECD産業自主公約(1995)に含まれています。この公約により低級ジフェニルエーテル類に対する環境中での暴露の危険性が低減されています。
http://www.greenstart.org/efc9/bfrs/bfr_pdfs/BFR_10_OECD_1995.pdf

NL:PBDEの禁止を実施しないという決定は、PBDEs(DBDEを含む)の焼却時にダイオキシン及びフラン類が生成されるかも知れないという危険性を再評価した結果です:”臭素化ジベンゾダイオキシン及びジベンゾフラン類は煙状ガスや浮遊灰中のダイオキシン及びフラン類全体の重要な部分では無い。(1998年オランダ難燃剤プロジェクトグループ)

US:OECD産業自主公約に追従。アメリカテレビ受像機市場で高度の防火安全性が実施されているほか、カリフォルニア州の家具安全性基準。

カリフォルニア:法令AB302、2003年9月8日可決、はpenta-及びocta-BDEを禁止しているが、Deca-BDEの使用を禁止あるいは制限していません。

自主環境ラベル計画:特定の製品に対する環境ラベル計画がEU及びEUメンバー諸国のいくつかに存在します。EU環境ラベルは、ある製品群に対してのみ、DBDEを含むプラスチックを除外しています。これらの計画はすべて全ての場合において自主的なものです。

供給会社/出典 他
・日本難燃剤協会
Tel:03-3517-2232  Fax:03-3517-2560
E-Mail:info@frcj.jp
URL: http://www.frcj.jp

・臭素化学・環境フォーラム(BSEF Japan)
Tel:03-6240-0951  Fax:03-6240-0952
E-Mail:info@bsef-japan.com
URL: http://www.bsef-japan.com

・デカブロモジフェニルエーテルの供給を行っている日本難燃剤協会のメンバー

アルベマール日本株式会社
〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル16階
Tel:03-5251-0796  Fax:03-3500-5623
URL: http://www.albemarle.com

ケムチュラ・ジャパン株式会社
〒105-0003 東京都港区西新橋1-14-2 新橋SYビル4階
Tel:03-5510-7000  Fax:03-5510-7004
URL: http://www.chemtura.com/chem/default.htm

ICL-IP JAPAN 株式会社
〒112-0004 東京都文京区後楽2-3-21 住友不動産飯田橋ビル5階
Tel:03-6801-8430  Fax:03-6801-6970
URL: http://www.icl-ipjapan.com/

東ソー株式会社
〒105-8623 東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル
Tel:03-5427-5165  Fax:03-5427-5215
URL: http://www.tosoh.co.jp

日宝化学株式会社
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-3-3 CMビル
Tel:03-3270-5345  Fax:03-3246-0346
URL: http://www.npckk.co.jp

※注意
 この難燃剤解説は、欧州難燃剤協会(EFRA)作成のFlame Retardant Fact Sheetをベースに、現時点で入手できる知見を基に日本難燃剤協会が作成しています。この難燃剤データ表は、健康・環境・規制情報等を提供することを目的にしておりますが、製品安全データシート(MSDS)・法的な要求文書等ではなく、また記載データは製品規格を示すものではありません。

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