主要難燃剤解説
リン

天然のリン
リンは単体として自然界には存在しませんが、地球表面の動植物と多くの無機化合物中に広くリン酸塩として存在しています。事実、地殻の約0.1%はリンで構成されています。
リンはバクテリアから植物、人間に至るまで、生命を形造る上で本質的な役割を担っています。
 例えば、全ての細胞の遺伝子はリンを含むDNAで構成されています。また人及び動物の骨や歯の基本成分はリン酸カルシウムです。

人体中のリン含有量
歯と骨
11-13%
─主成分:リン酸カルシウム
0.4%
─神経細胞の機能に不可欠
筋肉
0.18%
─エネルギー代謝の中心的な役割
身体全体(平均)
0.12%
─遺伝子を多くの細胞機能

リン化合物の日常的な用途
農業用化学肥料と家畜用飼料
リンは動植物の健康には欠かせない元素です。全世界の農業生産量とその品質は、必要不可欠な栄養素であるリンをいかに有効利用するかに依存しています。
食品
リン製品は飲食物に風味を加え、また肉、チーズその他の食品の栄養分を保つのに用いられています。
洗剤
リン酸塩は土壌に堆積することなく、また洗浄効果を高めるのに特に効果的な成分として、洗剤に用いられています。
産業用途
リンの化合物は、医薬、金属の表面処理、電気電子、製鉄、或いは油、プラスチックの添加剤等、産業の分野で幅広く重要な役割を果たしています。

難燃剤としてのリン化合物
─数多くの製品と材料に安全性を付与─
 天然及び合成の繊維、家具、プラスチック、建築材料等の火災に対する安全性を付与するために、リン酸エステルや赤リンをベースとした種々のタイプの難燃剤が開発されています。これらの難燃剤は次のようなところで、防火に貢献しています。
◆日用品、事務機器(テレビ、リモコン、家具)
◆衣料( 特に難燃性が要求される作業衣、子供用パジャマ、その他の衣服 )
◆乗り物( 国際的な防火基準要求に適合した公共及び個人の乗り物 )
◆建造物( 多くのビル及び最近使用されている断熱材の火災の危険性を低減 )

 リン系の難燃剤は火炎に必要な3要素 -即ち可燃物、空気、熱に作用して燃焼を抑制する働きを持っています。この働きは、リン系の難燃剤を添加された製品が熱にさらされたとき、次のような作用( 単独或いは複合の作用 )で達成されます。
◆可燃物の表面に作用し、可燃性ガスの発生を抑えます。
◆可燃物表面に炭化層を形成し、燃焼に必要な空気の供給を抑制します。
  更に、この炭化層は熱の伝導を遅延させる効果も持っています。
◆気相中の可燃性ガスの濃度を希釈します。
※注意
 この難燃剤解説は、欧州難燃剤協会(EFRA)作成のFlame Retardant Fact Sheetをベースに、現時点で入手できる知見を基に日本難燃剤協会が作成しています。この難燃剤データ表は、健康・環境・規制情報等を提供することを目的にしておりますが、製品安全データシート(MSDS)・法的な要求文書等ではなく、また記載データは製品規格を示すものではありません。

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